読書感想:宮部みゆき様 「楽園」上下

 

 『模倣犯』の劇場型犯人「真犯人X」に翻弄され、傷ついた前畑滋子は書けなくなっていた。マスコミに取り上げられ、そしてかろうじて真犯人を最後に暴く事はできたが、あの陰惨極まりない連続女性誘拐殺人事件の全容は、あまりに残酷過ぎ、以来、傷ついたまま眠るように9年を過ごしていた。子供を交通事故で亡くしてしまったある中年女性が、どうしても子供の事を調べて欲しいと尋ねてくるまでは。 

 「喪の仕事」交通事故で突然に子供を失った善良そうな夫人の痛みを少しでも和らげる事ができるのであればと、その仕事を断れなかった。少年のある絵に知りえるはずのない風景が描かれていた。あの山荘のおぞましい遺体の記憶。なぜ彼が知ってた?

 取材を続ける先では、あの事件の時のライター前畑さんですかと何度も指摘され、長い間避け続けてきた自分の内面を見つめ直さねばならなくなる。

 少年が描いた絵の意味を探る内に、またまた、事件に。。。

 

 そもそも前編の『模倣犯』が怖い。もう、私、怖くて読めなくなり、どのように高い評価や賞を受けた作品であったとしても、私は最後まで読むことができませんでした。ゆえにこの『楽園』上下巻も買ってから、怖くて眠れなくなりそうだった。読む気になれず、ず~~と読めずに『楽園』は積まれたままでした。ホコリかぶって、、、

 

 宮部様も、この作品の着想を得たのは、『模倣犯』執筆中に見た怖い夢だったそうです。それが、作中描かれています。

 それにしても宮部様は、不良少女が落ちる過程の描写が上手いです。客観的に描かれ、それで現実的に感じます。この筆致、現実に基づく作風が、宮部様の真骨頂であり、多作作家になりえた資質とあらためて思います。

 個人的には、少年の母の実家に刀自が出てくるのがですが、どこの地方にも、一人位はやはりいるものだと、妙に変な所で納得しました。

 ああいう勘の良い人の言った事が、3年10年して、あの時、ばあ様が言った通りになっているなと、年寄の直感はと、そしてそういう力のある人って自分の都合の良いように人を利用する手だてが上手い。この中年女性の利用されるだけの人生が、なぜか、既視感があり、、、妙にリアルなばあ様だと、二度三度、変に共感してました。もしかしたら、宮部様家系にも、第六感が妙にするどくて言った事が当たっていた年寄がいたのかな。そして、宮部様もやはり、霊夢とか見て、何とも妙な困った経験があるのではと。。。

 亡くなった少年のように強い霊感でなくて、多分、少し位はある人でないと、これだけのサイキックシリーズは書けないかとも思いました。宮部様、サイキックな少年、しかも、割と早くで亡くなる少年が多く書かれてますよね。本人は不必要な事が脳に浮かび苦しむのだろうなと妙に納得します。若い時、暗記学習を沢山つめこまないとならない若い時には、何の使い道もない能力に振り回されて、子供には厄介以外の何物でもない能力でしょうね。

 あ~~凡人に生まれて良かった。

 

 おかげ様でこの本は最後まで読めました。そして、最後は不思議と作中人物達も、亡くなった少年を悼む母親の傷は一生消えないでしょうが、癒されます。

 現代の言いようのない無力感や疲れた心に、金土日の読書にお勧めします。サイキックな話が出てきますので、頭から信用しない方は止めた方が良いでしょう。多少、夢見や少しは勘が強い人がまわりにいて不思議経験に理解があれば抵抗がないお話です。何より、「喪の仕事」心の傷を人が癒す過程に、不思議と読む方も癒されました。

  

 

 

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---  時代物の方が人情的にほっこりするので、やはり多く読んでました。

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