読書感想:宮部みゆき様 「この世の春」上下巻

宮部みゆき『この世の春』 

面白!読みだしたら、止まらない。寝不足必須。金土日でないと、もったいない。

 

 若殿がご乱心あそばした。小藩で押し込めになった若殿は、気の病がおありになる。突然、お世話する事になった出戻りの多紀は、夏の別荘の五香苑に連れていかれる。そこで、夜半、女のすすり泣きを聞く。ある日、突然、若殿が豹変し子供のように、多紀に甘え話しかけ、若殿、重興殿の病を知る事になる。

 

 何が面白いって、奇想天外なストーリ。この作品を書いた当時ならあり得ないでしょと思いながら、読み進めます(2017年)。ところが今や、まさか、まさかの J事務所の問題があり、妙にリアルな話に思えるから不思議です。この、妙にリアルだから、若殿、重興様の病は癒えるであろうか、あまりにむごい話に完全に多紀と同じように若殿をお助けしたいと、真犯人は誰なんだ。こんなひどい話が本当にあるのかと引き込まれてしまう。

 元江戸家老の石野織部、女中のお鈴まで登場人物もいきいきと描かれ、本当におもしろくて、眠れません。不祥事の責任をとって全く関係のない息子までお役目御免なんて、現代の会社も意地悪多くて本当大変だったけど、江戸時代のお侍さんも、命掛けだったのね、なんて、妙な所で共感しちゃった。

 この本でも、刀自、死者の気持ちを伝えられる能力のある人がでてきます。江戸時代の物語なので、信じてない人でも読めます。私は、そういう能力がある人がいても不思議ではないとかなり信じている方なので、むしろ、その能力がある故に不幸に巻き込まれる人々の方が、逆に怖かった。え、そんなむごい事ってなぜ。池から骸骨は、鳥肌たちました。

 この作品を書くにあたり、宮部様は随分と現代心理学の本も読まれたに違いない。時代が江戸でも、やはり現代を生きる人が書いた作品ですから、あり得ない事があり得そうなリアルな感じ。やはり、筆力が天才。

 

「人は、あまりに奇妙なこと、普通ではありえぬような出来事に直面すると、それを認めるよりも先に打ち消してしまうのだそうでございます」

 お屋敷で深夜に見かけたお面の大殿に似た男を、自分の見間違えかと忘れようとしたお留守居役は、後に悔いても悔やみきれない自分の落ち度であったと責めさいなみ、ついに病に倒れてしまいます。あの時はまさか、あり得ぬ事と自分で打ち消すしかなかった。

 この昏睡状態の人が、最初から口を割ってくれてれば、、、でも、サラリーマン社会は言えない。ましてや昔のお侍さんなら、切腹覚悟ですよ、あの時代は。

 難点は、下巻の後半が、、、ちょっとね。うん。でも、そうだよね。これだけ辛い思いしたのなら、そうか、完全に復活、元に戻るってわけにはいかないのか。。。姫様は何も悪い事してないのに、そうか。。。 

 やはり、人の運、不運。不条理って、いつの時代にも、いた仕方ないのかと、100%幸せってないのね。。。登場人物の誰に共感するかで、結末は微妙です。

 

 金土日に祝日がついた連休中なら、どっぷり宮部様ワールドに浸れます。

 

 

 

 

 

 

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---  時代物の方が人情的にほっこりするので、やはり多く読んでました。

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