読書感想:宮部みゆき様 「希望荘」

希望荘 杉村三郎シリーズ

 

 面白くて眠れません。短編で4つとストーリー追いかけるだけでも、夢中になり、眠れません。

 理由あって、また一人暮らしを始めた杉村三郎が、なぜか、またまた事件が持ち込まれて、他人の秘密を少しづつ探しだしていく。

 逆玉の輿婚を反対され勘当され、出戻りとなり故郷に戻り、ガン末期の父親に寄り添いながらそれなりに生きていく道を探していた三郎。それなのに、またまた、事件に出会ってしまう。普通に生きる人々が事件に巻き込まれ、そして悲劇が生まれる。

 個人的には、出戻りだと肩身が狭いのは、女だけではないのかと、田舎で人生を模索する描写が面白い。

 

 財閥のお嬢様の菜穂子様、突然、とっぴな行動、そんな浅はかな女性ではなかったと、違和感を覚えたあの行動さえ、宮部みゆき様は、読者に納得させる一文をさらりとぶち込んできた。

 夫婦の間の微妙なあやのような物が生まれだしていた時に、菜穂子も気づいていた。

「育ちがよくて恐れを知らないが故に勇敢な彼女は、私よりも先にそれに気づいていて気づかないふりをするのをやめた。」

 

 傍から見ていて、何不自由もない財閥のお嬢様が惚れた男と結婚できて、一粒種の娘の父親と別れる決心をするのに、このお嬢様は本当に鮮やかな技で、惚れた男を変えた。そして次はほとんど使い捨てにしている。金持ちのお嬢様らしい、さすが一代で財を築いた会長の遺伝子と、私はこの描写の裏に、宮部みゆき様は、随分といろいろな階級の人間に会い、その人となりを観察してきたに違いないと、妙な納得の仕方をしてしまいました。さすが流行作家は違うのである。

 

  三郎がさぐる事件の根底にあるのは、本当に悲しい人間の業のような物。善良な人間が、毒グモの巣にかかったような、なぜ、こんな結末になるのかと胸が痛む作品。

 別荘に来ていたお金持ちのおぼちゃまに誘われ、ひょんな事から小さな探偵事務所を東京で開き生活を始める事になったが、探偵事務所を始めるが閑古鳥で生活もつつましくなる。それでも、少しも元の財閥の元妻の家にすがる事もなく、淡々と生きていこうとする三郎。

 

 また東京の片隅で生活を始めたが、東日本震災で借りていた築50年の古い家が傾き、大家の家に移り住む事になった三郎。その家にはシャワーが付いてはいたが、、、

 「棺桶を立てたみたいなシャワーブースもある」 

 この一行で、どんな部屋に住む事になったのが、おおよそ目に浮かぶ。

 

 ストーリーだけを追わずに、じっくり読み込むと、上記のような宮部みゆき様節が、散財し、おお、さすがと、ペースを落として読み込むのもまた楽しい。

 通勤電車の中で読める量ではあるのですが、じっくり時間がある土日にこそふさわしい良書にございます。

 

 

 

 

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---  時代物の方が人情的にほっこりするので、やはり多く読んでました。

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