読書感想:宮部みゆき様 「長い長い殺人」

 しゃべるんです。ありえない物がストーリーころがしします。なんと、財布です。それで、主要人物の名前があまり書かれない。従い、読みながら、何がどうなっているのか、読み手の想像力をあおり考える必要が出てくる。多分、好き嫌いがはっきりしてる作品になるでしょう。この文章はつまんない人は、ある程度出てくる。

 場面が短い間で変わります。ゆえに、通勤電車の中でも読めない事もない。ただし、確実にミステリーを読む醍醐味は薄れます。従い、この本も週末にお勧めします。

 若い方には、わからないでしょうが、昔、携帯も防犯カメラもない時代に、保険金殺人の疑惑をかけられた、ある男がマスコミの寵児となった時期がございました。なかなか、物証がとれず、行動と顔は100%クロなのですが、その男は半年以上、マスコミの紙面を独占し続け逮捕されませんでした。

 ロス疑惑 - Wikipedia

 おそらく、その事実から想像を膨らませた作品だろうと思います。

 着眼点、マスコミのからっ騒ぎ、物証がとれない警察への批判。そして、マスコミの寵児となる男の軽妙なマスコミ対応やスタイルの良さと、その裏の顔を知ってしまった少年の苦悩。残念な犠牲者。崩せぬアリバイ。そして、模倣犯。はては、便乗したような新たな殺人と、今でも十二分に通じえる内容になっています。

 しかし、まだるっこしい。だって、財布が語っているから、そんな音がしたとか、部屋が変わると、何が語られていただろうかとか、大体ポケットに入っているから、視覚描写がない。すると、本当にわかりにくい、伝わらない文章になっているので、好きか嫌いかと言えば、、、

 しかし、最後は、きちんと落ちました。こんな殺人って、本当にあるのでしょうか。いや、助けてとシグナルを送っていたにも関わらず、殺されてしまった新婦さん、そして、唯一怖い人だと最初に見抜いていた少年の言葉を、子供のわがままな焼きもちと黙らせてしまった大人たち、一生、後悔だけが残るだろうなと思います。

 自分で小説書きたい人は、新しい試みと、一読必要と思います。それが、成功か、評価されるかは別にして、新しい表現方法でそれが読んでいて、やっかいで新鮮な小説でした。宮部様の筆力をゆっくりと時間を取ってしゃぶるように読む作品です。

 しかし、こんな愉快犯に狙われたら、もう、怖くて夜道も歩けないじゃないですか。そんな気分になったら、あなたは宮部様の魅力にねじ伏せられたという事です。

 

 

にほんブログ村 本ブログ 読書日記へ
にほんブログ村

 

ksfavorite.hatenablog.com

---  時代物の方が人情的にほっこりするので、やはり多く読んでました。

ksfavorite.hatenablog.com

 

 ↓ 小説書いてます。お読みいただければ幸いです。