読書感想: 「模倣犯」宮部みゆき 著

 怖い。ベストセラーだと聞いて5巻まで全部買ってしまったのですが、読めず飛ばし読み。怖すぎて無理でした。

 読書って、何のためにするのだろう。ほんの少しでも、豊かな気分になったり、自分の知らない世界でも良い気持ちになったりする。でも少なくとも、この胸が痛くなり、そして涙が涸れるまで泣いても二度と復元できない、人間の醜い性を思い知らされ、生きている事が辛くなるこの本は、私が望む読書ではない。

 1巻の最後、乾ききった達観が胸に残ってます。私たちは、勧善懲悪の結末が当然と読書してきた。天網恢恢疎にして漏らさずと、悪者は最後に暴かれるという結末が当然と読書では覚えてきた。

 現実の社会ではどうでしたか。

 難民問題、婦女暴行、殺人、虐待、戦争、、、奪われるだけの弱者と、ごく一部だけの勝者。人間の本性は邪悪だと知り、敗者は泣きくれる。

 あなたにとって、読書は何ですか? 私には思い通りにならない現実にボロキレのように使い捨てにされながらも、毎日満員電車にのり、耐えがたきを耐え、やっと見つけた贅沢な読書の時間。その時間に、現実の厳しさに打ち震えて、涙流したいですか? もし、読書があなたにとって、贅沢な時間で心休まる時と考えるなら、この本は向きません。なぜなら、素人が知り得ない犯罪が詳細に、ベストセラー作家の宮部氏の筆力で記述され、ぞっと寒気がするほどに冷酷に描写されているからです。

 宮部みゆき氏は、5年間法律事務所に勤めています。世の中の裏、ありとあらゆる不条理を知り得る職場。推察するに、この本を書かせた背景には、現実社会への怒りがぶすぶすと暗いガスのように渦巻いていたと思います。なんらかの仔細を聞いたか想像しうる環境にあったのですから。そんな仕事は、私には怖すぎて耐えられない。

 正直、2巻は全く読めなくなりました。虫けらのように簡単に女性を殺し埋める愉快犯の心情を読むなど、とても出来ません。後の3、4、5巻では、何か救いがあるだろうかと、信じられる事はあるのか。やっと助けてくれる人が現れた。え、まさか、嘘でしょ。え、善良な人々が負けてしまうなんて、ひどい、ひどい。

 ますます、人間不信が深まる本です。怖すぎて、表紙を見るのももう駄目です。

 しかし、若い女性には一読をお勧めします。特に2巻。よしんば全編読みとおせなかたっとしても、経験する前に世の中の現実を知り、そして、賢明な選択ができるように。現実、犠牲者は女性が多い。思えば、新聞で遺体発見、誘拐などの結論だけを知っていても、相手がどうやって近づいてくるのか、腹の中と口先がどれほど違うのかを知る事は、経験し、それが遅すぎるまで全く知ることはできません。騙されたと気づいた時は手遅れです。作中の女性も一切、相手を疑っていません。その上では、一人暮らしを始める前に、まだ信頼できる親に守ってもらえる内に読んでおくのは、素晴らしい警告の書となる事でしょう。

 映画版は2006年に中居君がピース演じているとのことですが、あの不条理極まりない解散後に、SMAPが大好きになった私も、この映画は記憶にない。怖すぎて、見れません。アイドルがピース演じて、100万人越えのヒットだったそうですが。

 それから、読んでも怖いと感じず、逆にひりひりと快感を覚える方。この本を読み間違っても「模倣」しようなどとは思わないでいただきたい。日本の警察は優秀、絶対、捕まります。

 いや~~、結末まで救いがない本、ひどすぎる。怖くて読めないので、ベストセラーでも名著でも沢山文学賞とってドラマや映画になって大成功作品でも、それでも、私の中では読めない本とランキングにしてます。

 独断的、無勝手流ランキングなので、ごめんなさい。

 

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