読書感想: 「火車」宮部みゆき 著

 小説の時代は少し古いバブル時期ですが、若い人にこそ、今、読んで欲しい。

 いや、怖い。お化け妖怪、寝起きの母ちゃんの顔よりまだ怖いのは、生きてる人間。これほどお化けがでなくて怖くて、最後まで寝ずに読んでしまった本は久しぶりです。なんとベストセラー作家の宮部様が、1993年に山本周五郎賞を受賞したミステリー長編です。 

 生きてる普通の人間しか出ません。どこにでもいる普通の人が落ちていくから、怖くてそれでも結末が知りたくて眠れません。結局徹夜してしまいました。すごい筆力です。

 コロナ関連で、「ペスト」カミュ著や、映画で「復活の日」は見ましたのでウィルスの怖さは身に染みたつもりでした。しかし、経済的死については、漠然と命があれば、また立ち上がれると考えていました。

 コロナですでに4万人も死者がでるアメリカで(2020年4月20日時)、経済再開を求めるデモが起こるのが不思議なニュースだと思ってましたが、これを読めば、経済「死」も病死同様に残酷だとわかります。

 しかし、しかし、あのバブルに沸いた華やかな日本経済の裏で、こんな地獄があったのです。新聞で読んだだけでは、実感しませんでした。本当に、怖い。

 サラ金地獄にはまり人生の坂道を転がり落ちていく様が、ほんの些細な不幸の一時しのぎから始まっているのですが、誰にでも起こりうる事です。それが体調不良というのですから、コロナでリストラ、不正規の失業が増えるであろう今後が切実に怖い。

 これから社会にでる、大学生、高校生の方、これは是非一読すべき書です。学校で教えない人生の教科書です。現代はサラ金法が改正され、このような過酷な取りたては表立ってはないように見えます。しかし、薬が街にあふれ、携帯で簡単に援助交際相手が見つかる現代は、地獄の入り口がより軽くおしゃれに化けて身近にあります。

 大事に育てすぎて行く末が心配なお嬢様のご両親。成人式のお祝いに、2,3度しか着れない着物に添えて(変えて)、一生身につくお金の教科書としてお勧めします。反抗されても、大人になった時、本当に愛されてたとわかる時がきます。

 私も徹夜で読み終えた後、年取った母への第一声は、

「お母さん、本当にありがとう。良くぞ無事に育ててくれました」

 幸いな事に、何事もなくどうやら餌食になる年は過ぎました。何も知らずに年取れた事こそが、幸せの証。年取ってからだって、オレオレ詐欺とかもありますから、、、

 後半から、絡み合った疑問が、ぐいぐい解けて結末が気になり、眠れません。寝不足必定。従い、連休の合間に一気読みです。

 もう一度、今度は一行一行読み直したい。

 いや、生きてる人間が一番怖い。怖い。

 

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火車 (新潮文庫)

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