読書感想:宮本輝 様 「灯台からの響き」

 妻が突然死んだ。夫婦二人きりで切り盛りしてきたラーメン屋の店主は、以来、店も開かず、ラーメン屋の2階の800冊程も増えた図書部屋にひきこもるようになった。ある日、本を開くと、亡き妻あての絵葉書が落ちてきた。海岸線に灯台の絵だ。男はどこの灯台だろうかと、全国の灯台を見てみたくなり旅にでる。生まれて初めて飛行機にも乗る。

 店を再開しようと気力がやっと沸いてきたが、おやじから叩きこまれた醤油ラーメンの味が、俺一人でだせるだろうか。小さな店とは言い、切り盛りできるだろうか。

 そして、男は若かった妻とある少年との出会いを知る事になる。

 

 ある、中年期初老期の危機を、後に残されてしまった男が超えていくか。普通、逆の話は多いし、女性は割と元気になる人が多いのですが、そういえば、男の人がどう乗り越えて生きるかという話は少ないですよね。この主人公は、ラーメン屋で食事には困らない分、悲惨な感じはないです。それが救い。旅行しながら妻を思いながら、立ち直っていく話です。女性だけでなく、男性にもおすすめします。人は喪失からどう立ち直るかって、若い内から引き出し作っておくのは良い事です。

 

 作中、ラーメン屋の店主が一人で店を切り盛りできるかと、2年も作らなかった店の味をまた作れるかと試作を始める所から、たまらなくラーメン食べたくなります。裏メニューでラーメンスープで炊き込みご飯作ります。そこに、理由あって何も具材を入れてしまうのを忘れてしまうと、チャーシューを細かく切って缶詰のタケノコを細かく切りあえたら良いと。。。あ、もう。よだれ。

 こういう旅の文章は、行く先々でおいしい食事の話が出てくるので、それだけで、たまらなくなります。さすが、宮本様。そして、各、灯台Google Mapすると、今や多くの人が写真や360度ビューを上げてくれているので、それを見るだけでも、すごく行った気になります。

 読みながら岩場に砂が吹き上げて、足元、大丈夫かなっと思ってましたよ。。。ああいう、魔の日ってあるのですよ。。。

 誰も助けに来なかったっていう所で、え、男の人だとそうなんだって、勉強になりました。

 

 ラーメンブームの時に、昔ながらの味を守った俺の店は客がとられた。やがて、ブームが去ると客は戻ってきた。

 「世の中は10年単位で大波小波がやって来て、淘汰されるものは消えていき、耐えたものたちが、人も物もさらに基盤を強くすると学んだ。」

 

  随所に、宮本節がはいり、そこで、しびれるわけです。この文章は、宮本様の自伝的シリーズをお読みになった方は、お父様の人生が思い出され、じわんと来るわけです。あの父上無しには生まれない作家、宮本様です。

 

 1冊なので、量としては金土日で読めます。仕込みにビール、焼酎、焼肉、ラーメンなどなど、ジャンクな食べ物ですが用意して。ついでに、お風呂に入りたくなるので、お気に入りの入浴剤を買ったら、もう、すばらしい週末になります。

 

 でも、これ読んだら絶対、灯台行きたくなると思う。間違いない。

 そして、敬礼!

 

 

 

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