読書感想:宮部みゆき様 「きたきた捕物帖」

 ふぐにあたって、千吉親分があっけなく逝ってしまった。3つの時に迷子となり親分に育てられた北一は、そのまま文庫売りとして16まで親分の家で生活できていたが、これからどうすればよいかと身の振り方を憂う。千吉親分の奥方は、目が見えないおとなしい方で親分の生前にはあまりお会いした事もなかった。お江戸深川で文庫売りを続ける事となった北一は、差配人の富勘からなぜか使いぱっしりを頼まれ、そして事件に巻き込まれる。立派なお屋敷で暇そうな留守居役に北一はなぜか気に入られ、番茶までふるわられ多いに助言いただく事になる。下っ端ゆえある日なんぞ、床下から見つかった白骨を掘り起こす、ぞっとして腰がひける難儀な仕事まで頼まれてしまった。それが、妙な男、喜多次との縁をつなぐ。

 

 宮部様の捕り物新シリーズでございます。楽しいエンターティメントとなっており、短編が4編で1冊。内容的にも通勤電車でも読める内容です。巻頭に深川近辺の地図が載っているので、何度もどこだろうかと見比べるのも楽しい。人物相関図は、インターネット上にあるので参照可能です。

www.bookbang.jp

 

 現代は、タワーマンションが乱立する隅田川佃島も、あの時代は、さぞかしいのどかな風景であっただろう。十万坪なんて、330,578.51平米。75平米の3LDKマンションが約4400個位並んだ遠距離を一日で走っていくとは、江戸時代の庶民は、本当、健脚だったと妙に感心する。現在は改修中で2025年まで休館中ではあるが、江戸東京博物館なども行ってみたくなる。生きていて、歩けたらね。。。改修工事、長すぎる。

www.edo-tokyo-museum.or.jp

 

 宮部様の作品で私が楽しみなのは、登場人物の着物の描写。今回も奥様、松葉の衣装が凝っていて楽しかったです。目が見えない方の五感、そして、驚くほどの記憶力がこの作品の知恵者として、事件解決の要になります。謙虚な人柄の北一がこれからどの位の人と縁を結び、まずはどなたかの子分と認められ、そして、いろはを習い、成長していくのか、楽しみな新シリーズの1巻となりました。

 しかし北一は少しは、護身術も身に着けないとね。。。なんて、余計な心配。 

 

 「天網恢恢そにして漏らさず」なんて、北一は返事したと書いてある。宮本輝様の自伝的小説で初めてこの文言の読み方から調べた私といたしましては、16の無学な少年が使う言葉かと、さては宮部みゆき様も宮本輝様の自伝をお読みになっているかと、その文章でしばらくいろいろとうがってしまった。

 

 しかし、宮部様には驚きます。三島屋百物語は9巻まで、杉村三郎シリーズは、コロナ前を描いたまで、そして、今度はさらにこの北一と喜多次さんの成長物語と、さらなる新シリーズを書き始めるバイタリティには驚かされます。

 そろそろ、国から文化財への理解に多いに貢献したとかで表彰しないといけないでしょう。女性の業績って、やはり低く見積もられるのかしらね。おフランスに30人以上行くお金があれば、一人の作家さんでこれだけ日本文化、日本の犯罪のからくり、それに巻き込まれた人間の悲劇を描いた作家さんいないでしょ。

 

 個人的には次は試験のあるクラスを受けるので、11月に試験が終わったら、読書三昧の10日を過ごしたく、16才の北一がどう成長していくのか次の休みで『子宝船』が楽しみでございます。

 

 

 

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---  時代物の方が人情的にほっこりするので、やはり多く読んでました。

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