読書感想: 「幻色江戸ごよみ」宮部みゆき 著

 宮部みゆき様の短編集、時代物、心に染み入る短編集です。前回「本所深川ふしぎ草紙」が心が温かくなる真珠なら、こちらは、クリスタルのように心が凛となります。短編集の割には止まらなくなり寝不足です。

 全編に哀しい情緒が流れています。江戸に生きる庶民のささやかな生活を守るのが、江戸時代は本当に大変だったのだと、切なくなるような哀しい流れです。女流作家ゆえ、女の人生が上手に書かれています。この短編集に関しては、全部がそれぞれ微妙に色が違い、どれが特に胸に残るという突出した作品ではなく、全編が一つずつ色を変えながらも、全体としては落ち着いたとても良い短編集になっています。不幸な人が多いのも、コロナで先行きが見えない現代に読むと、昔も今もさして変わらないと思えてきます。

 様々な手法で描かれている短編は、もう一度読み直しても、やはり宮部みゆき様の優れた筆力に圧倒されます。最終話の「紙吹雪」は、宮部様の現代物の「火車」の高利貸しの非道にあえぐ庶民を江戸時代の女性に変えた短編です。どちらも哀しい。短編は、余韻が長く残ります。

 通勤電車の中でのリフレッシュのための読書には、もったいないです。祝日の午後、自分だけの時間をゆっくりと過ごせる贅沢な時間のお共など、環境を整えてからの読書でより一層、この短編集の良さが染み入ります。

 

 

 

 

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