読書感想:宮部みゆき様 「昨日がなければ明日もない」

昨日がなければ明日もない 杉村三郎シリーズ

 

 これもまた、面白くて眠れません。短編で3つ入ってます。またまた、ストーリー追いかけるだけでも、夢中になり、眠れません。

 これだけのストーリーを書けるというのは、やはり宮部様が、若い時に法律事務所で書記をしていたという経験から、様々な事件を聞き、おそらく裁判所で実際の加害者と被害者の家族を見ていたという経験があるのだと思います。多作である事からしても、自分の経験だけのはずが絶対ないのです。やはり、外の事実を元に作品が構築できるか、いなかで、作品かける本数が変わってくるのだと、改めて考えました。 

 「絶対零度」とても怖い話です。なぜなら、実際に起こりうるお話だから。それにしても、美人でお金持ちの娘で惚れた男の欠点全部受け止めちゃう女っていうのは、素直な女というか、馬鹿というか、、、こんな女性、沢山いるのだろうと、この女さえもっと善悪の判断ついていたら、こんな愚かな男と結婚しなかったろう。そうすれば、新たな普通の暮らしをしていた被害者が、こんな理不尽なひどいめにあわずに、、、本当に恐ろしい話です。でも、実際、公にならないだけで、本当にありえそうなお話です。この女性の芯が一本抜けているに違いないけど、実在しそうな女性を描いている点が、冒頭の実際に裁判所で見聞きしている経験から書ける多作な作家は強いと思いました。

 あ、基本、私、男嫌いなんで、こういう男どもはもう天謀、征伐、もっと地獄落ちして欲しいわ。

 

 お次の話は、時代物にも通じます。これは、出来過ぎたお話だけど、面白い。これは、ありそうで、なさそうなお話。

 

 3番目はまたまた、狭い田舎で起きた顔が良く似た姉妹の話。その娘の変わり方も、こういう育ち方すると、こんな風に性質が悪い娘に育ってしまうのかと、また、同じ事を繰り返すしかないではないかと。。。そこに現れた杉村三郎と、なぜか、偶然、現れる警部補が実に人情家なのです。最後の最後で救いがあって、胸糞悪い話に、ほんの少しだけ浄化されるような。。。しかし、胸糞悪い話です。

 

 宮部様節も炸裂しますよ。

 杉村三郎が間借りしている大家の一族の五男が、長女を評して、

「うちの姉貴(長女)は悪魔ですからね。自分に従わない相手には、悪意しか向けない」

 

 財閥のお嬢様に責任があり離婚した杉村三郎に、大家の妻はいただける慰謝料なら、全部いただいてきなさい。どうせ、向こうは大金持ちなら三郎の娘が金に困る事なんてないのだからと言うと、その大家の夫は、

 「必要だから(養育費)を払うんじゃないよな。父親だから払いたいんだ。」

 と、慰謝料を全部養育費としておいてきた三郎の気持ちを斟酌します。

 

 うまいじゃないですか、一つの事象を、二人の人間に語らせて、男と女の視点の違い。そして、それに反論せず黙っていた妻と夫の関係性、全部描いちゃう。

 

 それに、自分に反論してきたら、嫌い、全否定するって、いかにも女性にありがち。それも不動産沢山持っていて、子供の頃から食べ物に不自由せず、家族に恵まれ幸せに育ってきた長女って設定が、本当、良く人物を描いてる。 やはり、こういう細かい所が、作品として読み応えも説得力もあるわけでして、、、随所に出てくる食べ物の話もね、おいしそうです。ホットサンドって、食べたいな。

 

 量的には、電車の中でも読みますが、やはり土日にゆっくり味わう、良質な作品でございます。

 

 あ、そう、最後に、警部補が、杉村三郎に言います。

 「あなたもしっかり頑張りなさい、探偵」

 

 って、最後に発表したのが、2018年11月。あれから、2020年にコロナありました。で、あ~~~杉村三郎さんは、その間、何がんばってきたのか、早く知りたい。知りたい。いや、多分、一度事務所たたんで田舎に帰ったよね。帰らざる得ないかな。仕事ないよね。書かないじゃない、書けなかったよね~~~。

 でも、もう、事件、起きてるでしょ。今や、アフターコロナよ。

 もう、早く、続編書いてください、宮部様!

 

 

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---  時代物の方が人情的にほっこりするので、やはり多く読んでました。

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