交差点で、大きな紙袋を両手にぶらさげ、おそらく貴重品が入っているにちがいないチャックもついてない大きな黄色のバックは肩からずりさがり、大きく開いたままだが、両手がふさがって紐を上げる事さえもできない。
彼女は、交差点の前で道路標識を見上げ、右に行くのか、左に行くのか、うろうろと。。。
あなたは、Youtubeに上がった、元やんごとなき姫様のNew Yorkでの姿を見ただろうか。
それまでは、私は、ただ単に、世間知らずの傲慢なお嬢様のわがままと、なかばあきれ果てて、
「親の顔が見てみたい」
なんて、笑いながらワイドショーを聞き流してきた。
旅立ちの日に空港で見せた笑顔に、たった一度きりの人生だから、失敗しようが、泣こうが、やりたい事を貫いて良かったじゃないかと、なぜか、さっぱりした気分にもなった。
元、お姫様がSPに囲まれているにも関わらず、機内持ち込み用の旅行鞄を持ち上げた時、初めて、あ、一般人になられると自分のカバンは自分で持たなければならないのかと、映像から消える姿を見た。
あんなさらさっらの髪、どれほどの高級なシャンプーリンスを使えばなれるのだろうか。なんて、全くの野次馬だった。
しかしだ、NewYorkの交差点で、SPの姿もない、両手に大きな紙袋を下げて右往左往するビデオを見てから、急に心配になった。銃の携帯が許される、New Yorkの街中で、無防備にもカバンの紐がずりさがりおっぴろげ、右か左か、どっちに行こうか。元姫様には、怖い街だという認識はなさそうだった。多分、無知なのだ。本当に何も知らない、箱入りなのだ。
迷う彼女の姿。
道じゃなくて、人生の選択なのか。
いや、彼女はもう、後戻りはできない道を自分で選び、歩きだしてしまった。
アジアンヘイトは落ち着いたのだろうか。映像に見えないだけで、誰か見守ってくれる人はついているだろうか。
そして何より、皆が想像しているように、あの「愛してます」と、大声張り上げた男は、いつまで信用に値する人間だと、姫様が払った犠牲に値するだけの男だったと、姫様は思えるのだろうか。
本人の決断で不幸になるなら、自業自得だ。いつでも日本に帰ってきたら良い。
でも、間違っても、間違っても、身代金目当てのプロ集団に襲われるなんて事には、絶対になってくれるなよ。
ありふれた雑踏の中で、旅行者と一目でわかるような無防備な姿で右往左往する元姫様の姿を見てから、私は急に心配になった。
国民を怒らせても良いが、絶対に、泣かせてくれるな、元姫様よ。
ワイドショーは雑音とすぐ消していたのに、私は、二度も三度もYoutubeを見直さずにはいれなかった。
怒り、あきれ、あきらめて、そして、こんな切ない気持ち。
韓国ドラマで良く聞く、「親は子には勝てない」って事なのだと、初めて知った。
幸不幸どっちになっても、本当、やっかいなお方である事は、間違いない。
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わんぐっどてぃんぐ: 第一部 戦中編 (恋愛小説 ファンタジー)