読書感想:「草花たちの静かな誓い」宮本 輝 著

    誰が何をしたら、面白い小説が書けるだろうか。

 1度でも読んでいただけるような作品を残したいと思った人なら、絶対にこの疑問を考えあぐねない人はいないだろう。アイデアなんて出てこない。出てきても、おおよそ先人が書いてしまったプロットをなぞっただけで新規性なんてないのだ。

  ベストセラー作家の作品を読み終えるたびに、いつも思う。

  どうしたら、こんなに多作になれるだろう。しかも、面白くて、先を急がずにはいられない。

 宮本輝様も、尊敬してやまない、本屋で見かければ手に取らずにはいられない、作家の一人です。個人的に9週間いろいろ頑張ってきた。自分へのご褒美にと、この本を選びました。

 電車通勤中でも1週間もあれば読める厚さではありますが、舞台はおしゃれなロサンゼルス近くの高級住宅地。コロナで海外旅行なぞ、いつ行けるようになるのでしょうか。せめて、週末、ビデオで波の映像など流しながら、ビールを片手に読むのがおしゃれかと思います。不思議に癒されるお話でした。なぜだろう。草花のせいかと思う。

 あらすじは、叔母が急逝し、遺産を託された。残された遺書の原本には、最後にマジックで消された数行があった。もしも誘拐された娘が見つかったら、7割は娘に渡してやってほしい。だが、その最後の行は、弁護士によって消されていた。主人公は、ロサンゼルスの叔母の豪華な家に行き、アメリカで誘拐された娘が生きている確率などありはしないと知りながら、その遺産をもらって良いのかわからず、ダメ元で探しだす。

 主人公がまだ35歳なのに、妙に老成している点が、どうもその文面の向こうに言葉を紡ぎだしている熟練のストーリテーラの息吹が感じれられてしまうのです。突然、遺産が転がり込んできたら、普通、35歳の男なら、高級車に興奮し、家から見える高級住宅地の家から見下ろせる西海岸の風景に酔いしれ、まず、女でしょ。

 で、一、二度、ちょっと失敗して、あれ、俺にはこんな大金扱えるような器ないな~~位の苦い自覚と共に、娘探しでしょ。それでも、よほど良い人です。欲に目がくらんで人格変わって、いきなりポルシェで高速ぶっとばし、クラブで会った姉ちゃんに良い顔してみせたら、次の朝は、ホテルで財布は空っぽ、すごい高い時計も盗られて、弁護士さんにあきれられ~~~の方が、よほど人間らしいのですが、そこが、ちょっと不満といえば不満です。MBA取ってるから、人間もできてるって、、、それは、実際に一緒に働いた事ない人の感想だよね~~~って、笑っちゃいました。

 逆。金がある内の子がストレートに出世して、いろいろ大変。秘書だったからね。世の中、先生ってつく職種の方が悪いってホステスさんが言うでしょ。良い人もいるけど、欠点が目立つ人も半分位はいますよ~~~。

  コロナの今、ロサンゼルスに行ける事なんてもうないかもしれません。一、二度行ったロサンゼルスの乾いた風、ちょっと歩いたロデオドライブ、、一度だけお呼ばれされたロサンゼルスの家のでかかった事。その数倍は大きい豪華な家だろう。。。そんな場所が書かれているたびに、Google Mapで旅した気分を味わいます。何度も書かれる叔母様のすごくおいしいスープを読むたびに、Soup Stockに行きたくなりました。絶対、食べたくなる。

 正直、電車に乗るのも怖いから、近くのスーパーで缶詰で我慢しちゃうかも、でも、器はいつもより良いもの使いましょうね。

 週末においしそうなスープとバゲット、卵にハーブ、冷えたビールを買い込み、「草花たちの静かな誓い」を読みながら、波のビデオを流せば、あなたはもう、ロスのビーチよ!!

 

にほんブログ村 本ブログ 読書日記へ
にほんブログ村

 

草花たちの静かな誓い (集英社文庫)

草花たちの静かな誓い (集英社文庫)

  • 作者:宮本 輝
  • 発売日: 2020/01/17
  • メディア: 文庫
 

 

 ↓ 小説書いてます。お読みいただければ幸いです。